レモンのひとりごと

1人暮らしのひきこもりなアウトドア。旅、キャンプ、アニメ、小説、料理、ジャスミン茶、鶏の唐揚げが好き。

結婚したくないんじゃなくて、できない20代後半の男の本音。

f:id:lemolog:20180116201952p:plain

いつの間にか30歳のドアノブに手をかける所まで来た。20代後半に足を踏み入れてから「結婚なんてしない」と宣言し始めていた。

 

ただただ、目の前の楽しいことだけを追いかけて、甘酸っぱくも、人生最大の恋愛をした高校時代。

 

あれから、10年近くが経とうとしている。

 

片田舎で生まれ育ち、家が一番近いからという理由で選んだ高校。

 

部活にも入らずに、カレンダーをめくった回数だけ、友人の家で過ごすよう毎日を過ごしていた。

 

なにもすることはないけど、友人の家で時間を潰して、どこ高の誰がかわいいなんてどうでもいい話で盛り上がる時間は輝いていた。

 

高校2年の夏。それまでの人生で2人目の彼女ができた。もっぱら街で1番かわいいと噂の彼女だった。

 

彼女は隣の高校に通っていたが、出会いのきっかけは、ペナルティーエリアでいきなりボールを拾い上げ、ゴールネットに叩きこむくらいの違反行為だが、友人がトイレに行ったすきに、携帯から彼女のアドレスを盗み見て、アドレス変更と称して、その子にも連絡を送ったことだった。

 

友人には「いつのまにか携帯の連絡帳にアドレスが入っていた」なんて見え透いた嘘をついた。

 

当時はスマホなんて代物はなくて、当然、LINEなんてサービスもない。キャリアのメールアドレスが主流だった。

 

個性的なメールアドレスを考え、友人のメールアドレスはみんな大事に管理していた。

 

当然、知らない人からメールが来ると「誰だっけ」と返信を送るのが普通の時代だった。

 

10代が当然のように携帯電話を持ち、インターネットがすぐ側にある時代。みんながみんな誰かと繋がっていたい世代だったのかもしれない。

 

なにはともあれ「誰だっけ?」から始まったコミュニケーションの数日後、唐突に彼女を呼び出し、告白した。

 

かわいい女の子と付き合うことはシンボルであり、なにより授業中はエロいことしか考ていない男子高校生には、かわいさは絶対の正義であり、女神だった。

 

彼女は、いわゆる誰にでも人当たりがよくて、みんなに好かれるタイプではなくて、コミュニケーションが下手くそで、素っ気なくて、無愛想で、でも自分にだけは見せてくれる笑顔は死ぬほどかわいくて、滝が下に流れるくらい当然に、彼女を好きになっていった。

 

動物園に行ったり、映画館に行ったり、ディズニーランドに行ったり、そんなデートらしいデートはほとんどしたことがなかった。

 

もっぱら彼女の家で過ごすことが多かった。

 

ただ、毎週水曜日が彼女とのデートの日。なにも言わなくても、当然のように水曜日は会うことが2人だけの約束になっていた。

 

水曜日が待ち遠しくて、学校終わりに彼女の家に寄り、晩御飯をご馳走になり、1週間の出来事をひたすら話し合い、帰りの時間になるまでただただ抱きしめ合った。

 

そんな毎日も2年経とうとした時、大学に進学した。

 

進路に悩み、距離が離れそうになったこともあったけれど、無事に2人とも合格した。大学は違った。

 

苦労して入った大学。その分、大学生活はめちゃくちゃ楽しかった。

 

湖に水を注ぐくらい意味もない遊びに、飲み会に、精を出した。彼女もサークルに入り、毎日を楽しく過ごしているようだった。

 

少しづつ、彼女との距離が生まれていることには気がついていた。いつしか2人だけの約束の水曜日もなくなっていた。

 

そんなある日、大学の知り合いに「お前の彼女すげえな」と突然に声をかけられた。なんとなく胸が騒いだ。

 

どういう意味か問い詰めたら、どうやら彼女の大学の中で何人もの男と浮気をしていたらしい。

 

大学だけでなくて、バイト先の店長、地元の先輩。至る所から、彼女の同じような話をきくようになった。

 

あの笑顔は自分だけのものだと自分に言い聞かせ、なにも言わず彼女との時間を過ごしたが、いつしか耐えられなくなり、ダムが決壊するように自分の中でなにかが弾け、2人の関係も弾けた。

 

彼女には泣いて喚かれたが、もうなにも信じることができなかった。

 

それからというもの、彼女の穴を埋めるかのように、ひたすらに遊びまわった。ただ、無意識の内に関係には薄い壁をつくり、結局、誰とも付き合うことはなかった。

 

大学に入学して、5回目の春を迎えた時、社会人になった。

 

遊びも収束し、女の人とはたまにご飯を行くくらいが丁度いいと思うようになっていた。

 

深い関係までなるつもりはなく、時間があるときにたまに飲みに誘い、近況なんかを話しながら「だれとだれが結婚するらしいよ」なんて俗世の話に花を咲かせるのが気楽で楽しかった。

 

仕事にも慣れ始めた社会人3年目。

 

周りが少しづつ結婚していく中、片田舎の地元の女友達が結婚することになり、二次会に行くことになった。

 

そこに彼女がいた。

 

昔とかわらず、ちいさくて、つねにムスっとしていて、でも笑うとどうしようもなくかわいくて、友人たちが作った余興のDVDが流れている時も、興味なさそうに眺める彼女がそこにいた。

 

唯一違ったのは彼女は一児の母になっていた。

 

式もお開きに近づいた頃、小学生にでも叩き割られそうな小さな勇気を胸に、彼女に声をかけた。

 

「久しぶりだね」と、たった一言。それ以上は喋ることができなかった。

 

その日の真夜中、一通のLINEがきた。

 

彼女からだった。

 

「突然でなにも話せなかったけど、話かけてくれてありがとう」と。

 

なにかが自分の中で爆発しそうになる感情を押し殺して「またどこかで」と、精一杯の強がりを片手に短い返事を送った。

 

陳腐なメッセージ送信音だけが8畳のワンルームを木霊した。

 

彼女と別れてから、10年近くが経とうとしている。

 

いまだに彼女ができないでいる。

 

結婚したくないんじゃない。恋愛がしたくないわけでもない。ただただ、できないのだ。

 

わき見もせずに誰かだけをずっと見ていられるか。だれかにずっとあなただけだと言ってもらえるか。そんな自信がないのだ。

 

そっと今日も1人で越す。水曜日の夜。

 

以上